キャリアカウンセラーのメッセージ

「キャリア」「仕事」「就職・転職」に関する実情について、キャリアカウンセラーの立場から発信して参ります。

50. あなたの本当の市場価値を診断

 何を根拠に診断してくれるのか甚だ疑問ですが、このようなキャッチコピーで登録を誘う人材紹介会社も未だに多いようです。そもそも「市場価値」とは何のことを指すのでしょうか。まともに答えることのできる人材紹介会社のコンサルは「いません。」また「診断」とは何をしてくれるのでしょうか。

 「あなたのいま貰っている年収と、あなたの業務から生まれる1年間の付加価値を数字で算出し、妥当かどうかを判断」

して頂けるのであれば分からなくもないです。ただ、その場合、それを算出するのにも、その人の勤務先にまで出向いて機密情報を収集する必要があるので、物理的には不可能です。(本人の年収は源泉徴収票を見れば、すぐ判りますが。)

 さらにひどくなると、「あなたはこの会社に移ったほうが市場価値が上がりますよ!」などとアドバイスをしてくれる人材紹介会社のコンサルも存在するそうですので、開いた口が塞がらない次第です。

 その会社のマーケット(それこそ市場)がどう推移するか、そこにおける個々の会社の売り上げはどうなるか、競合は、様々なリスクは、といった点に加え、転職した人が同じような付加価値を会社に提供できるかは、「入社しないとわからない」はずです。  

 さらに、例えすごいスキルがあって人材紹介会社の勧められるままに転職したとしても、転職先に不正会計が発覚→信用失墜→業績悪化→賞与カットとなった場合には、「市場価値が上がるどころか、(人材紹介のコンサルがよく使う言葉の)右肩下がり」にしかならないでしょう。(たとえ本人に責がなくても、「そのような会社に移るという判断をした時点で、そこまでの人」と見られるのが実情です。)

 膨大な数の個別年収データと、精緻なまでの個別各企業の賃金テーブル、評価基準及び人事制度が何故か人材紹介会社に蓄積されており、各業界マーケットを構成する要因及びリスクから生み出される精度の高いシミュレーションから導き出された「市場価値」であれば納得はしますが、人材紹介会社レベルのアセットでは到底無理です。

(それでも「いや私はできる!!」と主張するコンサルがおられるのであれば、その方には人材紹介で勤務するのではなく、是非、シンクタンクや金融機関のアナリストとして「あなたの市場価値を上げるために」勤務されることを、「キャリアカウンセラー」の当方からはお勧めする次第です。)

 結局はここでいう「あなたの本当の市場価値を診断」とは、

 

「履歴書に記載されている事項(年齢、卒業大学(院)、転職回数、在籍した会社の社格)と、その会社に来ている求人票とを「マッチング」し、マッチングできた求人に記載されている年収に少々上乗せした「年収レンジ」を提示することによって、その会社への登録を促し、個人情報を入手するための手段」

 

 であるというのはお分かり頂けると思います。


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