キャリアカウンセラーのメッセージ

「キャリア」「仕事」「就職・転職」に関する実情について、キャリアカウンセラーの立場から発信して参ります。

22.仕事の喜び(2)

 前項の、あるレジ打ちの女性の話をご覧になって、皆様はどのようにお感じになったでしょうか。当方が、最初に申し上げたいのは、

 

「レジを打ってほしいというニーズがあるから、レジ打ちの仕事が発生する」

 

ということです。さらに、(レジ打ちに従事する全ての方々が必ずこのような感動の場面に遭遇するはずはありませんが、)同じ「レジを打つ」仕事でも、本人の意識や取り組みだけでここまで変わるのかということもご理解頂けるのではと思います。

 当方が最近気になることの一つに、特に若い方が「個人」相手の仕事を避ける傾向にあるということが挙げられます。営業職を希望する方でも、「法人営業をお願いします」とか「メーカーでの営業」をお願いしますという希望がほとんどです。

 おそらく法人営業のほうが「就業環境が良い」や「休みが確保できる」という「程度」の理由からでしょう。確かに、人材不足とされる業界は、小売、飲食、介護・福祉など、対「個人」の仕事が圧倒的に多いという事実の裏返しとも言えそうですが。

 無論、人材不足の業界であれば、その業界で働く魅力を社会全体にお伝えする努力は必要ですし、当方も含めて就職支援に関わる者としても、雇用のミスマッチを解消するという名目で、こういった採用に課題を抱える業界への就職促進を「働く側の納得感」を伴って行うべきであるのは言うまでもありません。

 が、そもそも仕事に喜びを感じたいのであれば、モノを対象にする仕事よりも、カネを対象にする仕事よりも、ヒトを対象にする仕事のほうが、圧倒的に感動する場面は多いでしょう。なぜなら、モノにもカネにも「感情」はありませんが、ヒト(=個人)には感情が備わっているからです。

 しかしながら、感動を得られる機会が多いはずのヒト相手の仕事が何故か不人気であるのも、今の日本社会の職業観のゆがみを反映しているということでしょうか。あるいは、仕事の本質を理解しないまま、表面的なインターネットの書き込みや、社会から隔離された方々からの掲示板の意見だけに左右される職業観しか持ち得ない若年者が増えすぎてしまったからでしょうか。

 根本的な理由は筆者にも判りかねる部分ですが、詳細な分析は社会心理学者にお任せして、我々キャリアに関わる者としては、このような「ヒト(=個人)」相手の仕事の意義や本質、誇り、喜びといったものを、さらに登録者(=求職者)や社会全体に発信していくべきであると認識しています。

 もう一つ、就業先として敬遠されがちな業界での「仕事の喜び」を次回に御案内します。


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