23. 仕事の喜び(3)
当方の勤務先に転職や再就職の相談に来られる方々から頂くコメントで、「業界不問だが○○の業界だけは避けたい」というものも実に多く頂きます。その○○で圧倒的に多いのが、パチンコ業界です。イメージで判断しているのでしょうが、以下の話は、そのパチンコ店が舞台です。三笠書房 中山和義氏の「会社に行くのがもっと楽しみになる感動の21話」の90ページから全文を引用します。
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ある女性が、パチンコ屋さんで働いていました。彼女の仕事は、ホールでパチンコを打っているお客さんへサービスをすることでした。大当たりが出たときに玉を入れる箱を運ぶことが主な仕事でしたが、吸殻を取り替えたり、飲み物を運んだりすることもありました。
このパチンコ屋さんに、毎日のように来る常連のおばあさんがいました。おばあさんはパチンコ屋さんに来ると、いつも一番奥の台に座ってパチンコを楽しんでいましたが、彼女を見つけると、「昨日の夜、テレビ見た?私は物まねの番組を見たんだけど」とか「昨日は、息子とけんかしてね・・・」などど、いつも話しかけていました。
おばあさんは、お店に来るようになった頃は色々なスタッフに声をかけていたのですが、仕事が忙しい中で、一度話し出すとなかなか終わらないおばあさんの話を最後まで聞いてあげたのは彼女だけでした。
やがて、おばあさんは彼女だけに声をかけるようになりました。彼女は毎回、おばあさんの話を笑顔で楽しそうに聞いていました。田舎からひとりで働きに出てきていた彼女にとっても、おばあさんと話していると田舎にいる自分のおばあさんと話しているような気がしたからです。話に夢中になって他のお客さんが呼んでいるのに気づかず、上司から怒られることもあったほどでした。
毎日のようにお店に来ていたおばあさんでしたが、ある日を最後に姿を見せなくなりました。彼女はしばらく心配していたものの、仕事に追われて次第におばあさんのことを忘れていきました。
3ヵ月後、彼女がいつものようにお店で働いていると、見知らぬ男性から声をかけられました。男性は彼女に、
「○○さんですか?3ヶ月くらい前まで毎日のように来ていたおばあさんを覚えていますか?」と尋ねました。彼女が、
「覚えていますよ。急に来られなくなって心配してたんです。」
と答えると、男性は、
「彼女は私の母です。母か急に体調を崩して入院してしまったのですが、お見舞いに行くといつもあなたのことを話していました。元気になったらまた、あのパチンコ屋に遊びにいくんだとたのしみにしていました。
先日、その母が亡くなりました・・・。何の趣味もなかった母にとっては、このお店に来てあなたと話すのが生きがいだったようです。いつも、負けて帰ってくるのにとても嬉しそうでした。本当にありがとうございました」
と深々と頭を下げてお礼を言いました。
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次回に続きます。