キャリアカウンセラーのメッセージ

「キャリア」「仕事」「就職・転職」に関する実情について、キャリアカウンセラーの立場から発信して参ります。

49. 過去の成功体験を捨てる

 先日、当方の取引先で中途入社希望者向けの会社説明会が開かれ、そこに当方もオブザーブで参加させて頂いたのですが、その際に先方の本部長が何度も口にしていた言葉です。その会社はいわゆる「営業会社」の部類に入る大手企業で、毎年10名~30名規模の中途入社と、同じ程度の新卒入社を受け入れており、無借金、増収増益を継続している会社です。

  多くの中途入社社員が活躍している一方で、中途で入社して数ヶ月持たずに辞める方々も少なくない模様です。商品や営業のスタイルそのものは、全く難しくない模様ですので、新卒入社社員でも2ヶ月で売れるようになるとの事です。ただ、その会社の教育システムが独特なため、

 

「過去のやり方を捨て、白紙の状態で」

 

入社しないと、中途入社社員は結果が出ないとのことです。社会人経験を積んでいる中途入社のほうがその会社のやり方に馴染めない一方で、まっさらの状態で研修を受け「言われるように取り組む」社会人2ヶ月程度の新卒社員が実績を残していくのを傍目でみると、どうしても勤続できなくなる中途入社社員が存在するといった構図の模様です。

  それはそれで、その会社の問題点として改善の余地があるのを前出の本部長も認めておられましたが、結局は、中途入社社員の「マインド」の問題なのでしょうと、その時は当方も話した次第です。何もこれは、この営業会社だけの問題ではなく転職しようとする方々全てに当てはまる事項でしょう。

  身内の恥をさらすようですが、当方の勤務先(無論、人材紹介会社です)でも、おそらく中途で入社された40歳以上の方で3年以上勤続された方々はいないようです。特に、ここ10年程度で露出が目立つようになったいわゆる「新しい」産業(人材サービス、IT、介護、WEB関係などでしょうか。ほとんどがサービス業でしょう)においては、確かに、この時代の雇用の受け皿になってはいますが、一方で、離職率も高い水準を維持したままであるのも事実です。

  「新しい」産業ですので、過去の考え方はまったく通用しません。仕事の進め方や決裁の取り方などは、従来在籍した会社のやり方と全く異なるケースが多いようです。(と、筆者の勤務先を辞めていった大手企業出身の方が話していました。)

 そもそも、とあるIT関連の大手企業などは「他社が1年かけてやることを1ヶ月でやる」ということを公言しているくらいです。よって、その会社では1ヶ月で行う仕事を「前の会社の感覚で1年かけて」されたら周囲はたまったものではないでしょう。

  当方の先輩で、公的機関で再就職の支援業務に従事していた方から伺った話ですが、そこでも数週間のプログラムを再就職希望者向けに無料で提供し、応募書類の書き方や面接の練習などのプログラムを課しているそうです。が、それらは再就職においてはあくまでも「枝葉」の部分であって、最も大事なのは

 

「『過去の経験を捨てる』ことをどこまで各々の再就職希望者が理解するか」

 

であると教えて頂きました。

 

 正直に申しまして、「過去の成功体験を捨てる」ことは、転職もしくは再就職活動における内定を取るまでのプロセスでは全く影響しません。むしろ面接時のアピールポイントとして成功体験は自信を持って話して頂きたいものです。

 ただし、転職もしくは再就職活動の目的は「内定を取ること」ではなく、転職先もしくは再就職先で「活躍する」ことであるはずです。よって転職先もしくは再就職先の入社後に、真っ先に行うべきことは「過去の成功体験を捨てる」ことであるというのは、万人に適用できる法則かもしれません。


にほんブログ村