51. 27歳の肖像
先週のある日、業務で3名の方とお会いさせて頂きましたが、本当に偶然ながら全て27歳の男性でした。ところが各々で大きな格差のあった「27歳」であり、若干衝撃的でもあったので、触れておきます。概要は以下の通りです。
(個人が特定できない形で記します点、ご容赦下さい)
Aさん・・・有力大学大学院修了。大手メーカー勤務にて在職中
Bさん・・・有力大学卒業、1社目3ヶ月勤務後退職、バイトで過ごした後、2社目は1年強勤務、退職し、離職もうすぐ1年。
Cさん・・・有力大学法科大学院修了。社会人経験なし
いずれも有力な大学を卒業されている「27歳・男性」です。生涯所得の格差はすでに1000~2000万円くらいの差はついているかもしれません。(無論、所得が全てではありませんが。)
また、当然と言えば当然ですが、Aさんの話し振りからは相当の基礎能力の高さ、業務遂行能力を感じさせ、組織のリーダーとしての将来性を感じる一方、Cさんは対人コミュニケーションに相当の問題があり、社会人としての基礎から教育をする必要がある状況です。Bさんは「働くことの意味」を御理解されていないようです。おそらく22歳の段階では、基礎能力にはそんなに差が付いていないはずであったとは思いますが、「たった5年」でここまで差がつくものかということを実感した次第です。
キャリア支援に関わる者の常識として「社会人としての基礎能力は25歳くらいまでに完成する」と教えられています。よって、大卒でも、専門学校卒でも、高校卒でも最初に勤務する会社や、最初に指導を受けることになる上司などの「環境」がいかに大切かということも疑いの余地はありません。
その大事な時期に、例えば社会に出ないCさんのような方の「リスク」は相当大きなものになるということは(当事者には申し訳ありませんが)明らかです。
さらに30歳を過ぎると、どんなにあがいても社会人としての基礎能力は、よほどの宗教的な自己革新や催眠術にでもかからない限り、飛躍的に高まることありません。そうすると、今の時代の学卒者3年4割離職とか、学卒無業者数十万人とか、派遣刻み、フリーターモラトリアムといった現象から、ますます「格差」(所得面だけでなく、人間としての器量や本来、社会の構成員として持つべき能力及び職業観といった意味も含めて)が大きくなるのではということを感じざるを得ません。ましていわんやたった5年でこれくらいの格差になるのであれば、7年、10年となれば、取り返しの付かないことになるのでしょう。
大学生であれ、専門学校生であれ、高校生であれ「学生」を対象としたキャリア教育に関わる方々は、特にこの点を学生(及びその保護者)に繰り返し御説明頂き、当事者には御理解頂きたいものです。
社会人の数年でエンプロイアビリティのみならず、そもそもの基礎能力でも大きな「格差」がついてしまうこと、及び、一度ついた格差は、そう簡単には取り返せないという点です。全ての若年者が、明るい「27歳の肖像」を描けるようになって頂きたいと切に願うばかりです。