キャリアカウンセラーのメッセージ

「キャリア」「仕事」「就職・転職」に関する実情について、キャリアカウンセラーの立場から発信して参ります。

53. キャリア構築の主体は?

 表記のような質問があった場合、普通の感覚の方であれば「働く個人のキャリア構築は『その個人』が主体となって行う」と回答されるでしょう。決して、会社、組織、あるいは組織の上司ではないというのもご理解頂けると思います。

 会社や組織に、個人のキャリア構築を全て委ねてしまうリスクは、(シャープ社や以前のルネサス社を挙げるまでもなく)「かなり大きい」時代になってしまったということです。この辺の議論は、やはり学生時代にキャリア教育を受けた世代のほうが、理解頂けるようです。

 さて、「個人のキャリアは個人で構築すべき」というのが本当に理解されているのであれば、求人案件があろうがなかろうが、あるいは有効求人倍率が高かろうが低かろうが、大きな問題ではないと言えば極論すぎでしょうか。

 「希望の」求人案件がないことに不満を漏らす方、「雇用を何とかしろ!」と政府や行政に要求する方々、「求人を取って来い!」と人材紹介会社に要求する方々、世の中には色々おられますが、そもそも個人のキャリアは会社や組織がないと構築できないのでしょうか?

 仕事は顧客がいないと成り立ちません。これは職種、年齢、業界問わず成り立つ定理です。

 しかし「キャリア構築」は企業や組織がなくとも「その個人」が存在すれば可能です。あるいは「求人」がなくても可能です。組織がなければ組織を自分で作ればよいでしょうし、求人がなければ求人を作るところからキャリア構築を行えばよいだけの話です。

 このように書けば、(再)就職や転職活動で苦労されている方々から、「人材紹介会社のコンサルごときが、適当なことを言うな!!」とおそらく反響があるのでしょうが、転職や再就職時というキャリア構築の転換点における行動が「ひたすら履歴書を送るだけではないですよ」と言いたいだけの話です。

 おそらく、「キャリアは会社が用意してくれる」「私のポストは組織が用意してくれる」「然るべき権限を与えるようにヘッドハンターが交渉すべき」等と、時代錯誤な妄想に駆られている方々には、到底理解できない定理なのでしょう。理解できなくとも「将来にまで収入を得ることができた」時代ならそれでも問題はありませんでしたが、今はそんな時代でありません。

 沈没する業界に染まりきり、沈没する業界のノウハウや人脈を活かして再就職や転職をしたいと要求される方に遭遇すると、キャリアを会社に委ねてしまった方々の末路を思い知らされる次第です。

(無論、当方の勤務先もそうでしょうが)、10年先の身分まで保証してくれる会社や組織などは、もはや今の日本社会には存在しないのかもしれません。それを前提に、各々の生活事情等を踏まえてキャリア・デザインを行うべきなのでしょう。


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