キャリアカウンセラーのメッセージ

「キャリア」「仕事」「就職・転職」に関する実情について、キャリアカウンセラーの立場から発信して参ります。

42. 「考えることができない」方々

 先日、当方が所属するJCDA(日本キャリア開発協会)の会合で「経験代謝」なるものについて考える機会がありました。「経験代謝」の詳細は割愛しますが、簡単に申しますと、様々な経験を取り出し、客観視し、そこに意味を「具現化」することのプロセスと理解しています。且つCDAはそのようなプロセスを支援するカウンセリングを期待されていると当方は理解しています。(間違っていたら教えてください!)

 その場面において、CDAとしての支援や関わり重要なのは当たり前ですが、もっと重要なのはその本人(JCDAで言うクライエント、人材紹介会社ではご登録者)が「考えることができるかどうか」です。

 当方の実感では、年々、「考えることができない」方々が増えてきているような気がします。その結果、決断できない「ひ弱な」日本人が増殖しているのではないかと思う次第です。

 原因は簡単で、ITの進化によって考えなくても、コミュニケーションができるし、時間もつぶせるし、目的地にも行けるし、情報は簡単に収集できるし、場合によっては考えなくてもコピペさえすれば大学のレポートがかけて単位が取れるになってしまったことがあるのではと思います。

 しかし、ITツールだけでは解決できないような難関な問題、こと自分の人生や転職時の職業選択などの場面に出くわすと思考が停止するかのような発言をされる方も散見されます。さらには、決断できない=責任を取りたがらない(自分の人生でさえ)といった方々が増えているような気がします。その結果が、就職できない学卒者、離職期間の長期化といった社会問題にもつながっているのではと思う次第です。

 「考えてみると」同じスキルであれば賃金の安いほうを採用するに決まっていますし、同じ年齢であれば語学ができるほうを採用するに決まっています。同じような評価の方であれば転職回数が少ないほうを採用するでしょうし、同じ付加価値しか産まないのであれば年齢の若い方を採用するに決まっています。同じ経験であれば大企業で教育を受けた方を採用するに決まっていますし、人物面だけで採用するのであれば離職者よりも在職者を採用するに決まっています。資格があって実務経験がない方よりは、資格は無いけれども実務経験が豊富な方を採用するに決まっていますし、社会人経験が無いけれども勉強を続けた方よりは、勉強は辞めたけど愚直に社会人として経験を積んだ方を採用するのは明らかです。

 全てちょっと客観的に「考える」と簡単に理解できることではありますが、このようなリスクを考えることなく選択したため、あるいは現状から逃げたため、今の境遇に置かれているのであれば、現代社会や人材紹介会社を批判するよりは、「考えてこなかった」自らの過去を反省すべきかもしれません。

 神戸大学の金井教授が共著で出版された『リフレクティブ・マネージャー』(光文社新書)でも、その中で節目における内省の意義を記されておりますが、そのレベルに行かないまでも「自ら考え、自ら決断」し、その決断の「責任を自ら取る」という社会人としての当たり前の行動を取る方が減っている気がするのが杞憂であれば・・・と願う次第です。


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