キャリアカウンセラーのメッセージ

「キャリア」「仕事」「就職・転職」に関する実情について、キャリアカウンセラーの立場から発信して参ります。

44. 転職フェア

 毎年毎年、相変わらず「転職フェア」なるイベントが定期的に繰り返されているようです。JRや私鉄の社内中吊り広告でも、○ODAや○イナビの「転職フェア」なるものを2か月おきくらいに目にします。

 求職する側にとっては一度に多くの企業の採用担当者と接点が持てる機会であり、もちろん「入場無料」「予約不要」「服装自由」といったように気軽に来場できるだけあって、毎回相当数の入場者があるようです。

 しかし、求人をする企業側にとっては

 

「高いブース参加料を取られるだけで、お目当ての人材には全く会えない。会えてもせいぜい1/100以下!!」

「(だいたい転職フェアの開催は金~日なので)休日出勤をしなければならない。」

「一日中、人ごみの中にいるのは疲れる。」

 

という声も多く、開催会社の力の入れようとは「反比例に不評」のようです。

(当方の担当先の某大企業はこれらの「転職フェア」のブース参加には全く見向きもしないようです。)

 しかしながら、「とりあえず頭数を採用したい」会社、大量採用の会社、何でもよいから採用の母集団を形成したいような会社にとっては、効率的に大勢の求職者と接点が持てるとして重宝されているイベントです。よって、年数回開かれる「転職フェア」に「フル参加」している企業もあるくらいです。

 また、この手のイベントには必ず著名人の講演がセットにされます。さらにこのイベントの広告に掲載される参加企業は、必ず有名大手企業から順に掲載されます。勘の良い方ならお判りかと思いますが、○ODAや○イナビといった自社のブランド力だけでは来場者数に限界があるので、数を上乗せさせるために、そのような著名人や有名大手企業が半ば「客寄せ」に使われている次第です。

 一方、求職者のどれくらいの割合が、この「転職フェア」で実際に転職をされているのでしょうか。何か調査をしたわけではないので確固たるものがあるわけでもないのですが、当方が今まで面談をさせて頂いた約4,000人のご登録者の中で、過去に「転職フェア」で訪問した企業に転職したことのある方は7名です。もちろん、当方の経験だけで全てを判断するつもりは毛頭ないですが、おそらく「意外と少ない」のではと推測されます。

 結局、この手の転職フェアで得をするのは、多額のブース参加料を企業から徴収できる開催会社のみということはお察し頂けるのではと思います。広告に記載されている

 

「売り手市場の今だから、運命の1社を見逃していませんか?」とか

「Web上ではわからない、企業の”生”の情報を収集できます」とか、

「来場した方の85%が応募したい企業を見つけています」

 

などと広告には記載されていますが、別に情報収集は他の手段でもできますし、応募したい企業を見つけるのが目的でもないかと思います。

 もともと「軽~い」会社が実施母体ですので、イベント性を高めるのは得意なのでしょうが、もう少しこの現代社会に貢献できるようなイベントを企画頂きたい次第です。(と申しましたが、この「転職フェア」のキャリアカウンセリングのブースに、当方もカウンセラーとして座ったこともありますので、あまり余計なことも言えない立場でもあります・・・)


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43. キャリア解釈の二面性

 当方の理解では、キャリアに対する解釈は「きわめて主観的であるべき」で且つ「後から振り返って意味づけられる」ものあるというものです。よって、いくら人材紹介会社のコンサルごときを含めた他人がどのように解釈しようと、「本人が納得すればそのキャリアは少なくとも『是』である」と考えています。

 ただし、実際は、その解釈や位置づけうんぬん言う以前に、仕事で「収入」を得なければなりません。よって、生活ができなくなる、あるいは収入が途絶えるようなキャリアの積み方は、いくら本人の解釈が「是」であっても、周囲(特に家族)に迷惑をかけるという点では「否」にならざるを得ないのも現実です。

 また、キャリアの解釈については、当然、主観と客観の二面があるのも事実です。一つの会社で定年まで勤続できる保証や確信がある場合、あるいは、本人の意志「だけ」で仕事が成り立つ、あるいは生活に足るだけの収入が継続して得ることができる場合は、キャリアの解釈は主観のみで全く問題ないでしょう。問題は、そうでない場合、特に転職や再就職、あるいは職種を変えるなどのキャリアチェンジの場面に遭遇した場合です。

 この場合の「主観的な」キャリアの解釈は全く意味を成さないでしょう。なぜなら、転職や再就職の場面(あるいはキャリアチェンジの場合もそうですが・・)では、明らかに採用する側に主導権があるからです。この場面で優先されるのは「客観的な」キャリアの解釈です。

例えば早期離職を繰り返した方がおられたとして、本人がそのキャリアを

 

「多くの会社で様々な場面で経験を積めた有益な期間」

 

と解釈しても、客観的な解釈では、

 

「自分を組織に合わせることを知らない人物」

 

と断定されてしまうのは明らかです。転職市場においては、主観的なキャリア解釈はほとんどの方は意味を成さないと思って頂いて結構です。(よほど業界で名前の通った方や、職人などは別ですが、彼ら彼女らには転職の場面でも、転職「活動」というものは存在しませんので。)

 主観によるものと客観によるものという、キャリア解釈における二面性を理解して転職や再就職活動に臨める方は、転職活動には苦労されないケースが多いようです。一方、主観的なキャリア解釈のみに基づき転職活動を行うと、ミスマッチや、転職活動の長期化・離職期間の長期化、結果として転職市場における市場価値の著しい低下、さらに転職や再就職活動の長期化といったリスクを伴うことになるでしょう。

 なので、転職や再就職の場面に遭遇した場合には、極めて信頼できる第三者に客観的なキャリア解釈の支援を受けていただくことをお薦めする次第です。間違っても、人材紹介会社の人集めキャッチコピーである「年収査定」といった浅はかなものでなく、あくまでもキャリアの「解釈」を客観的に行うというレベルです。

 もし、人材紹介会社をそのように利用される方が多くなると、当方の仕事も面白くなるかな?というのはあくまでも当方の私見ですが、失敗する転職活動が感じ取れる履歴書を拝見すると、先に手を打てなかった不運を気の毒に感じる次第です。


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42. 「考えることができない」方々

 先日、当方が所属するJCDA(日本キャリア開発協会)の会合で「経験代謝」なるものについて考える機会がありました。「経験代謝」の詳細は割愛しますが、簡単に申しますと、様々な経験を取り出し、客観視し、そこに意味を「具現化」することのプロセスと理解しています。且つCDAはそのようなプロセスを支援するカウンセリングを期待されていると当方は理解しています。(間違っていたら教えてください!)

 その場面において、CDAとしての支援や関わり重要なのは当たり前ですが、もっと重要なのはその本人(JCDAで言うクライエント、人材紹介会社ではご登録者)が「考えることができるかどうか」です。

 当方の実感では、年々、「考えることができない」方々が増えてきているような気がします。その結果、決断できない「ひ弱な」日本人が増殖しているのではないかと思う次第です。

 原因は簡単で、ITの進化によって考えなくても、コミュニケーションができるし、時間もつぶせるし、目的地にも行けるし、情報は簡単に収集できるし、場合によっては考えなくてもコピペさえすれば大学のレポートがかけて単位が取れるになってしまったことがあるのではと思います。

 しかし、ITツールだけでは解決できないような難関な問題、こと自分の人生や転職時の職業選択などの場面に出くわすと思考が停止するかのような発言をされる方も散見されます。さらには、決断できない=責任を取りたがらない(自分の人生でさえ)といった方々が増えているような気がします。その結果が、就職できない学卒者、離職期間の長期化といった社会問題にもつながっているのではと思う次第です。

 「考えてみると」同じスキルであれば賃金の安いほうを採用するに決まっていますし、同じ年齢であれば語学ができるほうを採用するに決まっています。同じような評価の方であれば転職回数が少ないほうを採用するでしょうし、同じ付加価値しか産まないのであれば年齢の若い方を採用するに決まっています。同じ経験であれば大企業で教育を受けた方を採用するに決まっていますし、人物面だけで採用するのであれば離職者よりも在職者を採用するに決まっています。資格があって実務経験がない方よりは、資格は無いけれども実務経験が豊富な方を採用するに決まっていますし、社会人経験が無いけれども勉強を続けた方よりは、勉強は辞めたけど愚直に社会人として経験を積んだ方を採用するのは明らかです。

 全てちょっと客観的に「考える」と簡単に理解できることではありますが、このようなリスクを考えることなく選択したため、あるいは現状から逃げたため、今の境遇に置かれているのであれば、現代社会や人材紹介会社を批判するよりは、「考えてこなかった」自らの過去を反省すべきかもしれません。

 神戸大学の金井教授が共著で出版された『リフレクティブ・マネージャー』(光文社新書)でも、その中で節目における内省の意義を記されておりますが、そのレベルに行かないまでも「自ら考え、自ら決断」し、その決断の「責任を自ら取る」という社会人としての当たり前の行動を取る方が減っている気がするのが杞憂であれば・・・と願う次第です。


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41. プランド・ハプンスタンス理論

「プランド・ハプンスタンス理論」とは、スタンフォード大学教授のJ・D・クルンボルツ氏が唱えたキャリアに関する理論で、かなりインパクトを学会でも与えたそうですし、特に不確実な現代社会で働く方々に当てはまるということで当方もよく引用させて頂いています。

 日本語訳では「計画的偶発性理論」とされています。しかし、これでは何のことかさっぱりわかりませんので、戸田智弘氏の著書『働く理由』から引用しますと、

 

「世の中の変化は激しくなる一方だ。そうした中、自分の思い描いたとおりのキャリアを実現していくことはますます難しくなる。むしろ現実に起きたことを真摯に受け止め、その中で自分を磨いていく力が求められる。そのために自分から何かを仕掛けて予期せぬ出来事を作り出していこうとする意志が必要になる」

 

というのが解説です。これも当たり前のことを言われているような感覚になりますが、その「予期せぬ出来事」に順応し、「結果として」良いキャリアを自ら作っていくために以下の5つの能力が必要というのがクルンボルツ氏の主張です。

 

(1)好奇心

(2)持続性

(3)柔軟性

(4)楽観性

(5)冒険心

 

 そして、キャリアカウンセラーは登録者(=求職者)あるいは来談者に、上記5つのスキルを磨くようアドバイスすべきというのがクルンボルツ氏の観点です。

さらに先述の戸田智弘氏の解説を加えますと、

 

(1)キャリアの選択肢をオープンにしておくこと。(5年後や10年後には無くなっているかもしれない仕事だけに選択肢を狭めることはリスクが高い。)

(2)幸運が舞い込んでくるのではなく、幸運を作り出すために行動をすること。

(当方は、「No Apply, No Interview, No Achievement(応募しないと、面接にも進めないし、内定も取れない)」と日常業務ではよく話をさせて頂いています。)

(3)夢を描いてばかりでなく、夢に向かって少しずつでも試してみよう

 

と補足されます。さらに、クルンボルツ氏は「キャリアの80%は予期しない偶然の出来事によって支配される」と結論付けており、これを換言すれば「将来の目標を決めて、逆算的に計画的なキャリアを作っていくような手法は現実的でない」(大久保幸夫著『キャリアデザイン入門』より)となるわけです。

  実はこれは正に当方にもあてはまる部分です。現在キャリアに関わる仕事をさせて頂いていますが、20年前に「キャリアカウンセラー」になるとは想像すらしていませんでした。いくつかの偶然が重なり、現在の勤務先に勤め、「キャリア」に関するネットワークができ、今の当方が存在することを考えますと、「心から共感できる」キャリアに関する観点です。

 

 しかし、実際はこの段階でもピンと来る方は少数派ではないでしょうか。さらに興味のある方は、所由紀著『偶キャリ。』をお勧めしています。ビジネスの第一線で活躍している方10名の具体例を挙げ、どのような偶然がその方々のキャリアに「良い」影響を与えたか?どのような行動が「偶然」を招いたか?が説明されています。この本を一読頂けましたら「プランド・ハプンスタンス理論」が大枠でご理解頂けると思います。キャリアで成功した方々が、計画されたキャリアデザイン通りにキャリアを積んでいないこともお分かり頂けると思います。

(最近参加できていませんが)当方が所属する学会での研究でも「様々な出来事や環境から、労働者個人は自分自身の職業キャリアにあり方について意識する機会を得るが、その効果を作り出すのは『受け取る個人の中にある様々な力』である」と結論付けています。(すみません。出所が不明です。)つまり『受け取る個人の中にある様々な力』が上記の5つの能力になるわけです。

 

「まずは一歩踏み出そう!考えるのはそれからだ!」

 

と言うと、短絡的な方は「そんな精神論は不要だ!!」と反論するでしょう。が、実は精神論「ではなく」、キャリア理論に裏打ちされた考えであることをご理解頂ければと思います。


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40. キャリア・アンカー

 キャリアについて勉強したことのある方なら誰でも知っている言葉です。が、残念ながら人材紹介会社のコンサルでこの言葉を知っている方は2割もいないでしょう。(なぜなら、当方の勤務先がそうだからです。)

 本日はこの「キャリア・アンカー」について触れますが、もちろん、ブログ上での記述になりますので、より詳細な内容をお知りになりたい方は、専門書や解説書を読まれることをお勧めします。

 一点、大前提として、どんなに優秀なキャリアカウンセラーでも、登録者(=求職者。JCDAではクライエント)の経験(転職歴や学歴も含む)や実績は「絶対に変わりようがない」ということです。もちろん当たり前のことです。

 繰り返しますが、転職や再就職を試みる際にネックとなる2大要因の「経歴」と「年齢」は絶対に変わりません。但し、キャリア・コンサルタントと登録者の間に、キャリアに関する理論を介在することで

 

(1)今までの経歴(もしくは実績)に対する解釈が変わる「可能性がある」。

(2)今までは変化しなくとも、これから働く上での「マインド」が変わる「可能性がある」。

(3)今まで何らかの要因でキャリア・デザインに失敗した場合、その要因が明確になり、今後失敗しなくなる「可能性がある」。

 

という3つのメリットを享受することができます。

 全ての人材紹介会社のコンサルが、これらの理論を求人紹介以外に提供できる「付加価値」というレベルにまで理解できれば、キャリア支援に従事するものとしてのレベルが上がったことになると当方は認識しています。(おそらく無理な話ですが)

  さて、本題です。エドガー・シャイン博士(マサチューセッツ工科大学経営大学院名誉教授)は、日本での講演(確か2006年だったと記憶しています)の中で「キャリア・アンカー」について

 

(1)自分自身のセルフ・イメージ(例:○○に秀でている、○○によって動機付けられている、○○に自分自身は価値を見出している等

(2)キャリアや人生における判断基準となっており、一方、制約にもなっているもの

(3)そして、それは仕事の経験の積み重ねによって形作られるもの

 

と語っております。

 

 多くの働く人々は、意識するしないに関わらず、キャリア・アンカーを形成しながら仕事に従事しているわけです。初めからあるべき姿を求めて、それに向かって日々努力する人もいれば、気が付けば自分はこんな仕事でこんな職業能力を身に付けていた等、キャリア・アンカーの形成プロセスは実に千差万別です。当方の日常業務からの理解では、

 

(1)25~30歳くらいまでにキャリア・アンカーが形成されるほうが、キャリア・デザイン上好ましく、万が一の転職の場合にもスムーズに且つリスクヘッジされる形で行うことができる。

(2)より強固なキャリア・アンカーが形成された方のほうが、予期せぬ出来事が起こった場合にも順応し対処されやすい。

 

ということです。よって登録者(=求職者)がキャリア・アンカーを認識されていないケースがあった場合には、「何がそれに当たるか?」を一緒に考えるプロセスが発生します。その際のきっかけとなるのが、同じシャイン博士の「3つの問い」です。

 

(1)自分は何ができるか?

(2)自分は何がやりたいか?

(3)自分は何をしているときに社会的意義を感じるか?

 

です。当方が所属する日本キャリア開発協会では上記の(1)を能力、(2)を興味、(3)を価値観と置き換えて図示しますが、いずれにしても上記3つの重なる部分が多い仕事であればあるほど、その仕事は本人にマッチしていると言えます。また、上記3つの問いに対する答えが、そのままキャリア・アンカーになると考えて頂いて結構です。

  おそらく30代以上の方はほとんどが、このキャリア・アンカーは明確になっているはずです。一方、20代の社会人経験がない方、もしくは3年未満の方、さらには中高年でリストラによって今までの職業人人生に自信を失っている方々は、キャリア・アンカーは脆弱なものになっています。これらの方々は、まず、キャリア・アンカーを形成(もしくは修復)するところから支援をする必要があります。

 でないと、最終的な意思決定(つまり職業を選択するという最終決定)の場面で、本人が不安を抱えたまま判断がつかない事態が発生します。しかし一方で、自らの実績やインセンティブ、もしくは月末の締め等の人材紹介会社側の都合を優先させる為に、働く本人のキャリア・アンカーがあいまいなまま入社承諾の最終判断をさせる人材紹介会社が世の中に蔓延しているのも事実です。

 その結果が何年経っても一向に減少しない「早期離職」です。正しくキャリア・アンカーが認識され、正しいマッチングが行われれば、ミスマッチや早期離職はゼロになります。

 しかし残念ながら、「キャリア・アンカー」の言葉すら知らない人材紹介会社のコンサルに、いくら言っても馬の耳に念仏です。

 よって、そのような人材紹介会社のコンサルは、非公開求人の情報収集ルートの手段として「のみ」使って頂いて、相談事の核心や最終意志決定をする場面などは中立的なキャリアカウンセラーに頼るといった使い分けが必要かもしれません。


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39. 転職のプロ

 世の中には様々な「プロ」が存在しますし、時には憧れの存在になる「プロ」も相当数おられます。しかし、標記にございます「転職のプロ」は、尊敬や憧れの対象になりうるのでしょうか。さらに申しますとこの世の中に蔓延る「転職のプロ」とはどのような存在なのでしょうか。

 巷の転職サイトや転職本には、自称「転職のプロ」がうっとうしいくらい存在します。中には、ご丁寧に写真付き・実名付きで「転職のプロ」を名乗る昆猿、いや失礼、コンサルも相当数存在します。彼ら彼女らのような「転職のプロ」は一体何をしてくれるのでしょうか。また、どのようにこの現代社会に貢献してくれているのでしょうか。

 結論から申しますと、「何もしていません。」

 もちろん、働き方について指南して頂ける人、キャリアを考えたうえで相談に乗ってくれる人、仕事をするうえで困ったことがあった場合に助けてくれる人というのは、この不確実な時代には間違いなく必要です。

 ただ、それは同僚であり、上司であり、家族であり、友人であり、キャリアカウンセラーで十分に事足りる話です。もし、これらの方々に相談すらできないような困ったことがあった場合でも、間違っても、即、「転職のプロ」に相談に行くのでは「なく」、そこに至った背景や原因を、再度ご自身で考えるプロセスが必要です。

 そもそも、自分自身の人生に関わる「仕事」「キャリア」「働き方」といった大事な、大切な、重要なことにもかかわらず、そのような身近な人に相談すらできないというのは、何か「別の問題」があるのではと思いたくもなります。そしてそのような方こそ、今の会社を辞めるべきではないのは明らかです。

 「転職のプロ」は、確かに転職活動における経歴書類の書き方や、面接突破方法などのノウハウは持っているでしょう。ただ、あくまでもそれは対処療法に過ぎないというのは冷静になれば誰でも判ることです。

 ほとんどの方の場合、どのように転職をすべきかではなく、「どのように働くか」のほうがはるかに大切なはずです。さらには「どのように組織で自らを位置づけるか」「どのように(その会社に対して)自らの労働によって付加価値をもたらすか」のほうが、もっと重要です。 

 この課題に対して、真摯に回答できる「転職のプロ」は皆無です。なぜなら、「転職のプロ」自身も、そこまで考えて働いたことがないからというのが理由です。彼らにとって、「組織でどのように働くか」というのは、さして重要ではありません。その結果として平均在籍年数が短い(=何かあればすぐに辞める)、あるいは転職歴も多いということが共通項に挙げられるくらいです。

 また、該当業界出身の「転職のプロ」も笑止千万です。正確には

 

「該当業界で勤続できないから、人材紹介会社に行かざるを得なかったプロのような人」

とでも言っておきましょうか。

 当方の知人で、キャリアカウンセラーの「プロ」は無数におられます。自らの努力と人脈構築と学習によって、今の地位を築かれた尊敬すべき師や友人も全国に多数存在します。もし当方の知人や家族や友人が「仕事」「キャリア」「働き方」について悩んでいるのであれば中立的なキャリアカウンセラーへの相談をお勧めするのは言うまでもありません。

 ただ、それでも日々、自称「転職のプロ」のもとに相談に行かれる方々がまだまだ多数存在するということからも、ある意味、日本社会の平和さを実感する次第です。


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38. インテリジェンスHITO総合研究所

 人材紹介会社の大手とされるインテリジェンスという会社が作っているそうです。このような人材紹介会社系の調査部門や研究所らしきものが、何らかの情報を発信しているところが最近増えているような気もします。

 その中で、色々な調査やレポートなどを出しているようですが、何の目論見があってのことか首を傾げたく次第です。

 おそらく、自社の広報や宣伝以外の何物でもないと思いますが、そのようなことは専門家や公的機関にお任せして、

 

「人材紹介会社は(当方も含めて)求人を開拓することに注力すれば宜しい」

 

のではと思う次第です。さらに申しますと玉石混交の人材紹介会社が出すレポートの中に、必ず「求人動向」や「登録者状況」といった項目もあるのですが、それも「自社の宣伝」以外には全く役に立たない代物でしょう。

 月例で日経新聞の記事にもなる「中途採用の求人増加率」といった数字についても、日本社会「全体の」雇用に関する求人や採用を反映しているのかは疑問です。インテリジェンスという会社が受ける求人だけ、あるいはインテリジェンスに登録される人数だけを基に計算しているのであれば、それが何を意味するかは凡人の当方には全く判りません。

 そもそも、インテリジェンスに求人を出している会社が日本国内に存在する全ての企業の何%でしょうか。あるいはインテリジェンスを経由して採用している会社が全企業の何%でしょうか。あるいはインテリジェンスに登録している求職者は全体の何%でしょうか。これらを踏まえると、実に狭い範囲で、せせこましく数字を出しているだけの話にすぎないと思わざるを得ません。

 よって、そのようなシンクタンクの「ようなもの」を作っても、何ら日本社会に貢献しているものとは言えず、人材紹介会社の社会的地位が上がることもないというのが、まっとうな業界人の意見です。

 ましていわんや営業会社の急先鋒のような会社が出すレポートや調査だけに白々しく聞こえると言えば過言でしょうか。

 無論、そのシンクタンクの「ようなもの」が何かノウハウがあって、外販することによって収益を産めるくらい素晴らしい頭脳集団であれば別です。ただ、人材紹介会社関連の書き物など、「数年程度」業界で経験を積めれば書ける程度のものばかりです。例外は「ワークス研究所」くらいでしょうか。

 ただ、残念なことにワークス研究所の研究員も、なぜかリクルートを退社すると「ただの人になってしまう」ように見えてしまうのは当方だけではないと思います。まだまだ、この業界全体の問題として「本当に必要とされる社会のニーズに、業界全体が持つノウハウも追いついていない」という問題意識は持つべきでしょう。

 よって、日本政府と同じように無駄な組織を立ち上げるだけのではなく、繰り返しになりますが、1件でも多く求人を開拓し、1件でも多くの正しい再就職の実現にコツコツと地道に注力すべきです。

 形だけのシンクタンクや研究所などは不要というのが当方の主張です。


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